(第10章)AT強化(1)


第11章 AT強化(2): ATFクーラー交換/電動ファン取り付け
第12章 AT強化(3): トルクコンバータ・デチューン

慣らし運転の段階で「3−4速へのシフト」でATが滑ってしまったことは、
既に「改造第2段階終了/段3段階突入」に書きましたが、、、 (^-^)ゞ
ブーストかけない状態でATが滑るということは、
ブーストかけた時にどうなるのか?すごく期待が持てます。。。(^-^)
でも、そんなこと言ってられないので、即「AT強化」にとりかかりました。(^^;;
「AT強化」の方法には、以下に示すものがあります。
(1) ATF交換
(2) ATFクーラー強化
(3-1) ATミッション: 油圧ライン強化(油圧アップ)  
(3-2) ATミッション: クラッチ(ブレーキ)・プレート枚数増
(4) トルコン(ロックアップ機構)
(5) ロックアップ制御 11/06/'02 更新
【AT全体構成図】
今回のAT(ミッション)強化は、
『(株)シューベーレン』(神奈川県大和市)強化メニューの中の
「最強メニュー」で行いました。。

強化項目

(1) 3,4速の時に作用するハイクラッチをノーマルの5組から10組に枚数増し。
(2) 2,4速に作用するバンドブレーキ面積を150%にアップし、バンドの相手側のドラム周りを容量の大きいものと交換。更に、バンドを押すための2,4速ピストン&リテーナーの拡大。
(3) ライン油圧のアップ・作動油流量アップ。
ATについての詳細を勉強するには、
「オートマチック・トランスミッション入門」 (株)グランプリ出版、坂本著
がおすすめです。

テラノR50に使われているATは、
JATCOで開発された「RE4R01A型電子制御4速AT」で、
中型の商用車で多く使われています。
(フェアレディZのツインターボ以外にも、このモデルが使われています。)

”RE4R01A型”の進化型として、
セド・グロやZのツイン・ターボで使われている(容量アップした)”RE4R03A型”や、
R34から使われた”RE4R01B型”があります。

RE4R01A型電子制御式4速AT RE4R03A型電子制御式4速AT
ふたつのATを較べると、
R03A型の方が、トルコンも大きく、クラッチの枚数も多く、
全体に頑丈な作りになっています。

V30DETT・Zに使われている”R03A型”をベースに強化して、、、
という案もありましたが、
”R01A型”とは基本構造は同じでも寸法が30mm程違っているようで、
改造強化には時間がかかるとのこと。

一方、
ノーマルの”R01A型”をベースに改造・強化しても、
550psまでのパワーには耐えられるそうで、
時間的にも2〜3週間程度で強化可能とのことなので、
現行ノーマルAT(R01A型)をベースに強化することになりました。


ATFの交換

ATの制御のほとんどすべてに渉ってATFが用いられます。
ATは滑りを最大限に利用して動作していますので、
その滑りに伴なって発生する(摩擦)熱によりATFの温度はかなり高くなり、
その性能は劣化し、結果としてATの機能が低下します。

特にハイパワーなチューニングを施した高性能車の場合は特に、
高温になっても性能の劣化が少ないATFを用いる必要があります。

今回はTRUSTのATF「TYPE−V」を用いますが、
ここまでヘビー・チューンしない場合には「TYPE−W」というATFもあります。

以前は「ATFは交換しないでもよい」と言われていましたが、
ATFや含まれている添加剤の温度上昇による劣化は当然起きるわけですので、
ノーマル車でも2万キロ毎の交換が望ましいようです。

う@湘号は、
今まで2万キロ毎にATFを交換していましたが、、、
前回交換してから2.6万キロ経過していました。
ダートランなどの過酷な走行を行ったためか、、、
交換したATFはドロドロ・真っ黒状態でした。

クラッチ・ディスクの枚数増し等のAT強化を行った場合、
ATFの交換周期は、2万キロ毎で無く、「5千キロ毎」の交換となります。
(なかには、3千キロ毎に交換する人もいるそうです。)

ATFについては純正ATF以外は使わないほうがよい、
という意見もあります。
ATの制御が純正ATFの特性を基準にして設計されているため、
異種のATFを用いると条件が変って制御がうまくいかない、
ということが理由のようです。


とはいえ、
そうであれば純正以外のATFは世の中に存在しえない
ということになってしまいますが、、、
現実には各メーカーのATFが使われているので、
しっかりしたメーカーの性能の優れたATFを使えば、
多分問題ないのでしょう。。。。

注意しないといけないのは、
違った種類のATFを混ぜることは避けなければいけない!
ということです。


ATF交換する場合は、
循環式で完全に古いATFを新しいATFで交換しましょう。

ただし、
何万キロもATFを交換しないで走った車では、
コントロールバルプの壁にへばりついたスラッジが、
かえってATFを交換することにより剥がれ落ちてATFの通路を塞ぎ、
トラブルの原因となることが多いそうですので注意が必要です。


【ATFクーラー強化】

ATFの温度による性能劣化が、
ATの機能低下に与える影響は非常に大きく、
ATFの冷却を如何に効率よく行うか?
がAT強化の重要なポイントのひとつとなります。

ノーマルのATFクーラーは、
ラジエタ−の中を循環させて冷却する方法をとっていますが、
この方法では十分な冷却効果が期待出来ません。

そこで、後付けで空冷タイプの(増設)ATFクーラーによって、
更にATFの冷却能力を高めることが一般的に行われます。

JMOのスポーツ・トルコンにも、
増設のATFクーラーが一緒にパッケージされていますので、
最初はそれをそのまま使使っていました。

JMOトルコンに付属の(増設)ATFクーラー

「改造第3段階」も終わった2001年5月の中頃、
修善寺に遊びに行く途中の箱根ターンパイクの登りで、
前の車のスピードが遅く、
ノロノロののぼりが最初の登坂車線が出てくるところまで続き、
追い越し車線でスピードを上げてしばらく走るとまた前に遅い車が。。。(^_^;

しばらく走って行くうちに、「ATF OIL TEMP」の警告ランプが点灯・・・
そのまま大観山パーキングまでそろそろと運転して駐車場に。
ATシフトセレクターを「P」レンジに入れると警告ランプが消灯。
その後は問題なく走れましたが、
やはり心配なので、早速アルティメイトに連絡して
「ATFオイルクーラー」の容量アップすることにしました。

⇒ 「第11章 AT強化(2)」(ATFクーラー交換・電動ファン取り付け)に続く

ATミッション: 油圧ライン強化(油圧アップ)

ATの制御はすべて(ATFの)油圧で行われます。
ATの滑りを減らすためには、
油圧をアップすることが直接的に有効な手段となります。

油圧制御は、「コントロールバルブ」と呼ばれる油圧回路と
それをを切り替えるための装置を用います。

(ATFの通り道となる蟻の巣状の溝と、スプリング・パイプから構成されています。)

オートマチック変速機(AT)の変速時には、
次項で述べる「クラッチ(ブレーキ)」によって半クラッチ状態を保持し、
入力軸と出力軸の回転差を吸収しますが、
変速中の作動油圧を一定に保つため「アクチュエータ」と呼ぶ機構を使います。

油圧アップは、
このアクチュエータのスプリングを調整することで行います。
また、作動圧を逃がすリリーフバルブのセッティングを変える方法もあります。

ただ、油圧アップを行うと、
シフトショックが大きくなる、という副作用があると言われています。


ATミッション: クラッチ(ブレーキ)・プレート枚数増

マニュアル変速機(MT)のの変速時のクラッチの働きに相当するものが、
オートマチック変速機(AT)にも存在します。
(1−2、2−3、3−4速)シフトアップ/ダウンの時、
ATミッション内の「クラッチ・ブレーキ」が各ギヤ毎に用意されていて、
シフトアップ(ダウン)の際「自動的に」締結・解放されて変速が行われます。

今回のATミッション強化では、
3−4速のシフト用クラッチ(ブレーキ)・プレートの枚数を「10枚」に増やしています。

(もともと限られた枚数のプレートを収容するように設計されているところに、
新たに追加するわけですから、大変な作業です。
AT強化を専門に行っているところにしか出来ないようです。)

(1)クラッチピストン
(2)ディッシュプレート
(3)ドリブンプレート
(4)ドライブプレート
(5)リテーニングプレート
(6)、(7)スナップリング
(8)スプリングリテーナ
(9)リターンスプリング
(10)Dリング
(11)オイルシール

トルクコンバータ(ロックアップ機構)

トルクコンバータは流体(ATF)の粘性を利用して
「非接触で」入力軸の回転を出力軸の伝達していますが、
回転が上って「トルコン領域」から「流体カップリング領域」になると
(流体粘性による伝達だけでは滑りがゼロにならず必ずロスが起きるため)
「ロックアップ機構」によって
入力軸(コンバーターカバー)と出力軸(ピストン/タービンランナー)を
機械的に直結し、燃費向上をはかっています。

ロックアップ機構
(1) クラッチフェーシング
(2) コンバーター・カバー
(3) ロックアップ・ピストン
(タービンランナー直結)
(4) クラッチ・ハブ
(5) トーション・ダンパー
(6) インプット・シャフト
エンジン高回転(高速巡航)時には、
このロックアップ・クラッチも滑り始める怖れがあり、、、
結果としてクラッチの焼きつき・破損を起こす心配もあります。
しかしながら、トルコン内部にロックアップ機構が組み込まれているため、
今回はロックアップ機構には手を加えることはできません。
その代わり、『手動で』ロックアップ機構を殺す「スイッチ」を付けて
高速巡航時にはロックアップしないようにするアイデアもあります。
AT: Dレンジモニター取り付け
偶々テラノ仲間の”なかだ@マエストロ”と
ATのシフトポジションを表示する「ATドライブレンジ・モニター」の話をした時、
「ロックアップ解除スイッチ」のことを話したら、、、
早速作っていただきました。(^-^)
8/10/2002更新
「解除スイッチ」を取り付けた後、
それ程滑っているような気もしなかったのであまり使っていなかったんですが、
先日、(ATミッション強化に伴なう)1⇒2速のシフト・ショックの改善のため、
アキュムレータの加工をしてもらった際、鉄粉吸着磁石にビッシリと鉄粉が。(^_^;。
やはりロックアップ・クラッチが滑っていたようで、
ブーストかけて走るときは、やはりこまめにロックアップを解除しないと。。。
アキュムレータ制御・ロックアップ解除を、
ブースト圧によって自動的に作動するように出来れば楽なんですが。
⇒【ロックアップ解除
JMOでは
AT強化が必要な「ハイパワー・チューニング車」に対して
JMOスポーツ・トルコンを使用することを
お勧めしていないようです。。。(^-^)ゞ

ライト・チューンの範囲であれば、
JMOトルコンを使用すれば相当気持ちよい走りとなりますが、、、
(ロックアップも含めた)トルコンの強度という意味では、
ヘビー・チューンした車で使う限りはノーマルと大差ないようです。


今回のAT強化でも追いつかないようであれば、、、、
Z32・VG30DETT用”R03A型”をベースに
新たにAT強化を行うしか無いようです。(^^;;

強化ATに対しては、
ATF交換も以下の注意書きにあるようにかなり面倒になります。

ジャトコ電子制御AT(日産、マツダ、スバル)

@ ATFはトラスト スーパーグレード・タイプVか RED LINE レーシングATFを使用して下さい。 他社の強化タイプのATFでも使用可能ですが100%の実力を発揮できない可能性があります。 純正や強化タイプでないATFは使用しないで下さい。 どうしても使う場合は添加剤を入れて出来る限り早く指定のATFと入れ替えて下さい。

A ノーマルATとに比べて、エアーの抜けが悪いのでATを十分に暖機してからATFのレベルを確認して下さい。 特に気温の低い時期には気を付けてください。

B 日産車は純正のラジエターロアタンク内のATFクーラーは出来るだけ使用せずに(どうしても使う場合はラジエター屋でATFクーラーを交換してもらって下さい。2万円前後)アフターマーケットのATFクーラーを装着して下さい。 ATF温度が上がりやすい場合は、ATFクーラーを大型のものに交換するか追加して下さい。

C ATFは5,000Km毎に交換してください。ATF温度が120℃を超えたときはすぐに交換してください。

D ワンウェイクラッチは強化出来ませんが、トヨタ車程トラブルは出ていませんのでそれほど気にするこてゃないと思います。しかしキックダウンは避けた方がワンウェイクラッチが長持ちすると思います。



装着後の注意

 弊社の強化ATはアイシン・ジャトコのどちらも、通常のATに比べて大変エアー抜けにくくなっていますので、装着後は必ずリフトアップして無負荷状態で全てのギアに何度も変速して、変速ショックが強くなるまで繰り返してからATFレベルを確認してロードテストしてください。 走行後もう一度ATFレベルを再確認して下さい。
 ATF不足によるトラブルが冬季は特に発生しておりますので十分にお気を付けてださい。

ロックアップ制御

偶々テラノ仲間の”中田@マエストロ”と
ATのシフトポジションを表示する「ATドライブレンジ・モニター」の話をした時、
「ロックアップ解除スイッチ」のことを話したら、、、
早速作っていただきました。(^-^)
AT: Dレンジモニター取り付け

8/10/2002更新
「解除スイッチ」を取り付けた後、
それ程滑っているような気もしなかったのであまり使っていなかったんですが、
先日、(ATミッション強化に伴なう)1⇒2速のシフト・ショックの改善のため、
アキュムレータの加工をしてもらった際ATのオイルパンを外してみたら、
鉄粉吸着磁石にビッシリと鉄粉が。(^_^;。
やはりロックアップ・クラッチが滑っていたようで、
ブーストかけて走るときは、やはりこまめにロックアップを解除しないと。。。
とはいえ手動でON/OFFするのは面倒で、、、
北海道ツーリングの後半から常時ロックアップ解除モードでいたら、
燃費がかなり悪くなってしまいました。 (T T)

10/20/2002更新
アキュムレータ制御・ロックアップ解除を、
「ブースト圧によって自動的に作動するように出来れば楽なんですが、、、」
と書いたら早速、
いつもお世話になっている「テラノ カスタムパーツ」のマエストロ中田さんから、
『出来ますよ〜!』という力強いお言葉が。。。(^-^)v
ということで、マエストロにお願いして、
「(ブースト圧による)ATロックアップ制御」装置
を実装していただくとこになりました。m(_ _)m
場所は、今回「あらも秘密工場」です。
マエストロ中田号 う@湘号
ロックアップ制御制御に用いる「ブースト圧」は、
ブーコンに入っているラインから分岐させて取り出します。
画像中央に見える白い四角の部品が、プレッシャ・ゲージです。
途中に、チャタッリング防止の仕掛けを入れて、、、
電源ラインにつなぎます。<赤コード
青コードは、運転席の「制御スイッチ」につなぐコードです。
プレッシャ・ゲージの拡大図(↑)
(真ん中のネジを回して、制御圧を設定します。)
取り付け後の試乗も無事終了。
これで、ロックアップのことは考えずに走れます。(^−^)

11/06/2002更新
11月に入ってめっきり寒くなったこともありますが、
「ロックアップ制御」装置を取り付ける前はあっという間にATF油温が90℃を突破、
ATFクーラーの電動ファンがブンブン回り始めてましたが、、、 (^-^;
取り付け後は油温が70℃を超えることもまれで、燃費も回復しました。。
トルコンは強化出来ないとのことなので、
ROMチューン等でパワーアップしたAT車には不可欠ですね。

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