(EOS-1D)RAWイメージ現像ソフト比較
(October, 2004)

2002年1月に EOS-D30 から EOS-1D に乗り換えた時から、
(D30時代のJPEG主体に対し)RAWモード主体で撮影しています。
RAWモードはJPEGと較べると画像サイズが大きくなりますが、
撮像素子からのデータをそのまま(画質劣化無く)取り込むことが出来るので、
後でPCで自由にレタッチ出来るのが魅力です。
RAWモードで撮影した画像からJPEG画像に変換するには、
専用ソフトを使って「現像」と呼ばれる処理を行います。

1Dを使い始めて最初の2年間は、
1Dにバンドルされていた現像ソフト "Canon Raw Image Converter" を使っていました。
レタッチ・ソフトは、D30から使っていた "Adobe Photoshop Element 1.0" でした。
("PS Element" は、後でプリンタ/スキャナにバンドルされていた 2.0 に変更。)
2004年1月に、"Photoshop Element" から
新しく発売された "Photoshop CS" に割安でアップグレード出来ることが分かり、
1Dの現像ソフトも組み込まれているとのことなので、思い切って切り替えました。
今では、"Photoshop CS" をメインで使っています。

銀塩と違ってデジタルではフィルム枚数の制約を気にしなくて済むので、
一度に数百枚のRAWイメージ画像を現像することになります。(^^ゞ
そのため、CPUの性能と搭載メモリ容量が十分で無いと処理が終わりません。(^^;;;
そこで、1Dに交換してしばらく後にメインのデスクトップ・マシンを,
VAIO L720 (Pentium-III@600MHz/256MB-mem) から、
NEC Valuestar G/Type-C (Pentium-IV@2.8GHz/1GB-mem) に更新しました。

ホームページに掲載する画像は、1枚毎に現像パラメータを指定して現像し、
"Photoshop CS"を使って1枚毎に色補正・トーンカーブ補正等のレタッチ処理と施し、
最終的にJPEGに変換していますが、数百枚の画像の中から掲載画像を選ぶのに、
"RAW Image Converter" を使って大まかな現像パラメータで一括現像し、
Preview 用のJPEG画像を作成しています。
その後キヤノンから新しい現像ソフト "Canon Digital Photo Professional" がリリースされ、
それまでの "Raw Image Converter" は今後はサポートされなくなるようです。
今後は、"Digital Photo Professional" に移行していく予定です。

以下では、
3種類の現像ソフトと2種類のレタッチソフトで行った現像処理の結果を比較検討します。
現像ソフト レタッチソフト 現像出力・レタッチ処理
(A) Adobe Photoshop CS Plug-In Adobe Photoshop CS 16-bit/RGB各色
(B) Canon Raw Image Converter Adobe Photoshop Element 2.0 8-bit/RGB各色(注)
(C) Canon Digital Photo Professional Adobe Photoshop Element 2.0 8-bit/RGB各色(注)
【サンプル画像】
高尾・撮影実習 本栖湖・富士撮影 横浜ズーラシア・撮影実習
小石川植物園・撮影実習 古代蓮の里・撮影実習#1 古代蓮の里・撮影実習#2
明野町・向日葵撮影#1 明野町・向日葵撮影#2
明野町・秋桜撮影#1 明野町・秋桜撮影#2 箱根彫刻の森・撮影実習
現像パラメータについては、
「カラーバランスは個別に設定」、「トーンカーブは撮影時設定のまま」、
「シャープネスは最小」、にして現像しています。
レタッチ処理も最小にして、
「アンシャープ・フィルタ(量:100%/半径:0.8pixel/しきい値:50)」
だけにしています。

現像した色調を見ると、全体的に PS-CS Plug-In での赤みが少し強いようです。
実際のレタッチ処理では、トーンカーブの補正、カラー・バランスの補正、
アンシャープ・フィルタ処理、の3種類の処理を基本にしています。
下記の「部分拡大画像」を見ていただけると分かりますが、
現像した結果を16ビットでレタッチした画像は、細部の色調がつぶれること無く残っているので、
最後に各色8ビットのJPEG画像にしたときでも鮮明な画像が得られています。
(注) このページを作っている時、"Adobe Photoshop Element 3.0" の発表がありました。
「RAWイメージ処理」と「16ビット処理」がサポートされているようですので、
細かい色補正機能を使わなければ、"PSE 3.0" でも十分使えるようになるようです。

【高尾・撮影実習(2004年4月3日)】
高尾に撮影実習に行ったときに撮った、「ミドリザクラ」です。
逆光で撮影し、キラキラと光を受けて輝く花弁の透明感を出そうと思いました。
Adobe Photoshop CS Canon Raw Image Converter Canon Digital Photo Professional
PSCSの現像は少し赤みがかっていて、CRICは緑が多め。
CDPPが一番自然な色合いでしょうか。。。
【部分拡大画像】
16ビット処理のPSCSの画像は、
さすがに花弁の表面の質感を十分感じさせていますし、
おしべの花糸のエッジや葯(やく)のディテイルも表現されていますが、、、
かたや8ビット処理のCRIC/CDPPの画像はちょっぴり眠たい感じがします。

【本栖湖・富士撮影(2002年11月3日)】
お気に入りの富士山画像のひとつです。
薄明に浮かぶ樹木と富士山のシルエット、本栖湖の湖面の漂う霧と湖面のさざ波とが、
全体に暗い画面の中でつぶれてしまわずに表現出来てると思うんですが・・・(^^ゞ
Adobe Photoshop CS Canon Raw Image Converter Canon Digital Photo Professional
やはりPSCSの現像は赤みが強く、赤みを減らして青みを強くした色調整が必要です。
このサイズではよく分かりませんが、
PSCSで現像処理した画像は、富士山頂の雪の描写が他の2枚よりシャープです。

【横浜ズーラシア・動物撮影(2003年5月11日)】
横浜のズーラシア(動物園)で撮影した「ドゥクラングール」です。
いつも下向いていてなかなかこっちを向いてくれないんですが、
この時はちょうど顔を上げたところでした。
Adobe Photoshop CS Canon Raw Image Converter Canon Digital Photo Professional
檻の中は暗くてダイナミック・レンジがとれなかったので、
この画像は Photoshop (CS/Element) で「コントラスト補正」をかけています。
【部分拡大画像】
16ビット処理のPSCSの画像は、毛髪の生え際・一本一本の描写がシャープです。
一方、CDPPがこの中で一番シャープさに欠けています。

【小石川植物園・撮影実習(2003年6月7日)】
小石川植物園の「額紫陽花(ガクアジサイ)」を100mmマクロで撮影した画像です。
Adobe Photoshop CS Canon Raw Image Converter Canon Digital Photo Professional
このサンプルでは、色調は三種類の現像処理でほとんど差がでていません。
【部分拡大画像】
サムネイル画像のサイズで見ても、16ビット処理と8ビット処理の差が分かります。
特に、花弁表面の描写に差が顕著に出ています。

【古代蓮の里@行田・撮影実習#1(2003年7月12日)】
行田市にある「古代蓮の里」に咲く、「古代蓮(行田蓮)」。
初夏の強い日差しで、花弁の透明感が一層強調されます。
Adobe Photoshop CS Canon Raw Image Converter Canon Digital Photo Professional
このサンプルでは、PSCSの赤みが強い現像処理がかえって自然な色調にしています。

【古代蓮の里@行田・撮影実習#2(2003年7月12日)】
こちらも同じく行田市にある古代蓮の里の「舞妃蓮」です。
全体的には、色調にほとんど差は無いように見えますが、、、
Adobe Photoshop CS Canon Raw Image Converter Canon Digital Photo Professional
花弁の白さから見ると、CDPP の現像処理が一番自然な感じに仕上がってします。
【部分拡大画像】
複雑に絡み合ったおしべの微妙な階調の変化の表現に、
16/8ビット処理の差があらわれています。

【明野町・向日葵撮影#1(2003年8月3日)】
山梨県・明野町に親父と一緒に向日葵撮影に行った時の画像です。
少し開花が遅れていたようで、数えるほどしか向日葵は咲いていませんでした。
花には、ハナアブが何匹もとまっていて、格好の被写体。
Adobe Photoshop CS Canon Raw Image Converter Canon Digital Photo Professional
ダイナミックレンジが広い画像なので、明るい部分の階調がつぶれていて、
画面右下に写っている葉の緑が、右の2枚(8ビット処理)では抜けてしまっています。

【明野町・向日葵撮影#2(2003年8月3日)】
同じく山梨県・明野町の向日葵画像です。
Adobe Photoshop CS Canon Raw Image Converter Canon Digital Photo Professional
やはり、PSCSの現像処理は赤みが強く出ているのが分かります。
【部分拡大画像】
花虻(ハナアブ)の姿を切り出しました。
(蜂の翅は4枚ですが、蝿・蚊・虻の翅は2枚なので「双翅目」と呼ばれます。)
翅脈のシャープさ、翅膜の透明感・質感がPSCSで現像した画像ではよく描写されてます。
腹部に生えているビロード状の毛も、シャープです。

【明野町・秋桜撮影#1(2003年8月3日)】
明野町では向日葵だけでなくコスモスも咲いていました。
向日葵は数が少なかったんですが、秋桜の方は赤・白・ピンクの花が満開でした。
Adobe Photoshop CS Canon Raw Image Converter Canon Digital Photo Professional
赤い花なので、現像処理での差はほとんど出ていません。
(CDPPの現像は、少しくすんだ感じに仕上がっています。)
【部分拡大画像】
花の中心を切り出してみると、
ビロードのような花弁の質感とその上の花粉の描写に差が出ています。
また、8ビット処理ではめしべの黄色が飽和してしまって色とびしてしまってますが、
16ビット処理では飽和せずに階調が残っています。

【明野町・秋桜撮影#2(2003年8月3日)】
同じく明野の秋桜畑に咲くピンクのコスモスです。
元の画像の露出が足りなかったので、デジタル露出補正を +1/2 かけて現像し、
レタッチは、3枚とも"Photoshop CS"で同じ設定でトーンカーブ補正をかけています。
(CRIC/CDPPで現像した画像は、PSCSでは8ビット処理。)
Adobe Photoshop CS Canon Raw Image Converter Canon Digital Photo Professional
PSCSで現像したイメージは赤みが強かったので、レタッチで赤減色補正しています。
CRIC/CDPPで現像したイメージは青みが強くて紫っぽくなったので、
CRICではレタッチで青減色補正を、CDPPでは現像時に「忠実設定」色補正を、
それぞれ施しましたが、CRICのイメージでは少し紫が残ってピンクにはなりません。
【部分拡大画像】
デジタル露出補正・トーンカーブ補正・色補正をかけているので、
元の画質は低下していますが、
16ビット処理では細部のシャープさはそれほど損なわれていません。

【箱根彫刻の森・撮影実習(2003年10月26日)】
箱根・彫刻の森美術館で撮影実習があった時に撮った、
ブールデルの「四体像(自由・勝利・力・雄弁)」です。
Adobe Photoshop CS Canon Raw Image Converter Canon Digital Photo Professional
現像処理での差はほとんどありません。
【部分拡大画像】
8ビット処理では光が強く当たっているところが飽和して潰れていますが、
16ビット処理(PSCS)では微妙な階調が残って銅像の質感がよく描写されています。

【サンプル画像】
高尾・撮影実習 本栖湖・富士撮影 横浜ズーラシア・撮影実習
小石川植物園・撮影実習 古代蓮の里・撮影実習#1 古代蓮の里・撮影実習#2
明野町・向日葵撮影#1 明野町・向日葵撮影#2
明野町・秋桜撮影#1 明野町・秋桜撮影#2 箱根彫刻の森・撮影実習

う@湘のお部屋 カメラのお部屋